電装トラブルはフェラーリの宿命か?
フェラーリに限らず、スーパーカー全般に電装トラブルはつきものです。とはいえ、フェラーリは特に電気系に弱いという話を耳にすることが多く、それには確かな理由があります。
イタリア車らしい繊細な設計と、センサーの多さ、電装部品の配置構造。この3つが重なることで、トラブルが起きやすいのです。
たとえばフェラーリ360モデナの場合、バッテリーがリアバルクヘッド寄りの前方にあり、配線距離が長くなる構造になっています。これが結果として電圧低下を招きやすく、電装部品の誤作動につながるのです。
特に頻発するのが「チェックランプが突然点灯する」「メーター内の表示が乱れる」といった症状で、原因が特定しにくいのも厄介な点です。
また、長期間乗らないこともトラブルの温床になります。週末しか走らせないというオーナーは多いですが、実はバッテリーの電圧管理が不十分だと、わずか数日でも電力供給が不安定になり、各種エラーを引き起こすことがあります。
フェラーリの電子制御系は、最新モデルになるほど複雑化しており、ブレーキ制御やエアサス、トラクションコントロールまで含めて電気に依存している部分が多いため、一部の異常が全体に波及する可能性もあるのです。
予防こそが最善のメンテナンス
こうしたトラブルを未然に防ぐには、予防が何よりも効果的です。特に重要なのがバッテリーの健康管理と、日常的な始動チェックです。
まず、フェラーリのバッテリーは一般的な乗用車よりも高性能なAGM(吸収ガラスマット)タイプが使われていることが多く、過放電に弱いという特性があります。そのため、定期的なエンジン始動や維持充電が推奨されます。
実際に多くのオーナーは、ガレージにバッテリーメンテナー(トリクル充電器)を設置し、使わない日もコンセントから電源供給することでバッテリーの状態を安定させています。フェラーリ純正品はもちろん、CTEK社など信頼のある製品を使うと安心です。
また、電装トラブルの中には、湿度や温度差の影響でコネクターが腐食してしまう例もあります。特に雨天走行後や洗車時に水が内部へ侵入すると、わずかな水分がセンサーを誤作動させるケースも報告されています。
これに対する予防策としては、「ガレージ保管を徹底する」「定期的にコネクター部を点検する」「異音や違和感があればすぐ専門店に相談する」といった細かなケアが大切です。
フェラーリに乗るということは、こうした手のかかる面も受け入れてこそ楽しめるというのが本音かもしれません。
バッテリー交換は慎重に進めたい
万が一、バッテリーが寿命を迎えてしまった場合でも、焦らずに手順通りに対応すれば問題ありません。ただし、フェラーリのバッテリー交換にはいくつか注意点があります。
まず、使用されているバッテリーの規格が特殊である場合があり、サイズ・端子形状・CCA(コールドクランキングアンペア)をしっかり確認する必要があります。特に電子制御が複雑なモデルでは、電圧安定性が求められるため、互換品であっても性能が不足していると別のトラブルを招くことになります。
次に、バッテリー交換作業時のメモリー保持です。近年のモデルでは、電源が完全に遮断されるとナビのデータやセッティング情報が初期化されてしまう恐れがあります。そのため、交換時にはジャンプスターターを併用してメモリーを保持した状態で作業するのが一般的です。
さらに注意したいのが、「エラーのリセット」処理です。バッテリーを新品に換えても、ECU(エンジン制御ユニット)に残ったエラーコードが警告灯として残ることがあります。この場合は、OBD2診断機を使用してリセット作業を行う必要があるため、専門店に依頼するのが確実です。
電装系の不具合は見えない不調として現れることが多く、体感としてはわかりにくいものです。けれども、フェラーリにとっての電気系は、走行性能や快適性の根幹を担う大切な要素。
だからこそ、日常のちょっとした違和感にも敏感になり、メンテナンスに手を抜かない姿勢が、安心してこの名車を楽しむための最短ルートになるはずです。